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先祖伝来の日本刀 

私にとって、特別な日本刀があります。 その日本刀との出会いは、私がまだ幼かった頃の祖父の家でした。私が遊びに行くと、祖父は決まってその日本刀を出し、その日本刀の手入れを見せてくれました。そして、その日本刀の思い出を私に語ってくれたのです。
貧乏な家庭で育った祖父でしたが、学業が優秀だったので本家の叔父の援助で現在の山口大学機械科へ進学しておりました。しかし、ついに祖父の所にも軍隊への招集がきました。本家の叔父は、祖父の身を案じ、御守り刀として先祖伝来の日本刀を持たせてくれました。 しかしその後すぐ終戦になり、祖父は七九歳になるまで、その日本刀と共に平穏に過ごしました。

祖父は、子供だった私に、その日本刀の手入れをしながら、お世話になった本家の叔父さんのこと、自分の父親のこと、先祖のことなどを話してくれました。子供だった私は、祖父が話してくれる物語をとても楽しみにしていました。そして、会ったことの無いその物語の登場人物すべての人に、親しみを感じ、まるで会ったことがあるかのような錯覚を覚えました。
今、祖父が大切にしていたその日本刀は、私の手元にあります。 祖父の枕刀となり祖父の最後の歴史を刻み、私が次の主となり受け継いでいます。 私はその日本刀と対峙すると、祖父を思い出します。そして、祖父を思い出すたびに、祖父がお世話になった本家の叔父、その先のご先祖様まで、まるでそこにすべてが存在しているかのような気がします。
将来、祖父が私に語ってくれたように、自分の子供達にも、その日本刀を通して私の想いや物語を語りたいと思っています。 そして子供や孫にとっては、私もその中の登場人物になり、長い歴史の中で、私、両親、祖父母・・・私達が存在していた、私達の想いが存在していた証拠として、この日本刀が未来の大切な私の家族の支えになってくれることを硬く信じています。

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